四半世紀ありがとう

本の感想・あらすじetc

蝶々喃々

小川糸さん/ポプラ社

 

文体が美しい

 

恋愛に関しては直接的な表現が無く、読み心地の良い作品

想像で解釈する場面が所々あるため(春一郎関連)

全て余すところなく把握したいタイプには向かないかもしれない

 

 

全体を通して丁寧な作品

 

特筆すべきは下記描写の細かさとリアルさ

❶四季折々の自然や現象に対しての主人公の感想

ex(薄氷・鯉のぼり・花の香り・空の色など)

 

❷食事や建物の説明の細かさ

ex(素材の香り・包丁の音・食感など)

 

特に食事に関しては圧巻だった

素材を揃えるために散歩がてら立ち寄ったお店の雰囲気や

送ってもらった桃を段ボールから出した時の香りなど

想像し易く、共感し易かった

 

また、花が咲く描写を音に例えている場面があった

『池の方に耳を澄ますと、花が咲く瞬間の音が聞こえてくる。

まるで、笑いたいのを必死に堪えて、でも堪えきれずに思わず吹き出してしまったかのような音だ。』

上記本文抜粋)

 

非常に美しい感性だと思う

花が咲く音など想像したこともない

私の貧相な感性と語彙を駆使して想像したところで

「パッと咲いたような」「ゆらりと咲いている」など

緩急をつければ良い、というような雑な表現しか思いつかない

 

それを笑い声に例えるなど、想像もしなかった

だが、不思議としっくり当てはまるような気がする

 

他にも「風をたっぷりと孕んで泳ぐ鯉のぼり」や

「花火からはたくさんの流れ星が生まれては消える」

などといったように、とにかく表現が美しい

 

丁寧に豊かに生きている主人公の1年間を語るにはもってこいの語り口調で

まったく違和感なく読み進めることができた

 

男女間の歪な関係も、きれいな表現で描かれているため

特有のいやらしさがなかった

 

 

 

 

 

気持ちが疲れてご飯を食べるのも面倒な人にオススメ

 

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